【エストニアサウナ出張記 Vol.2】 世界トップクラスのキャビンサウナメーカー・Auroomを訪ねる


 2023年1月、totonoüメンバー7名がエストニアを旅しました。経営陣はエストニアに何度か来ていますが、施工担当のメンバーは初めて。今回の大きな目的は、現地のサウナビルダーから組み立て技術を学ぶことでした。ビジネスパートナーとじっくり話して信頼関係を深め、totonoüが輸入するサウナの製造・組み立て工程を自分たちの目で確認し、エストニア各地にあるサウナを満喫した数日間。エストニアの豊かなサウナ産業に触れた旅の軌跡を、同行した現地在住ライターがレポートします。

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デジタル化と手作業の絶妙なバランス

エストニア滞在2日目は、ラクヴェレからエストニアの第二都市であるタルトゥに移動。前日のバレルサウナに次いで、totonoüが扱う家庭用サウナを製造する「Auroom(オールーム)」のオフィスと工場を訪問しました。藤森慎吾さんも購入したキャビンサウナはここでつくられています。これまで150以上のサウナがtotonoüを通じて日本へ旅立って行きました。

安全ベストを着て、まずは工場見学から。明るく広々としていて、きっちりと整理整頓された工場内に、一同ワクワク。担当者のPeeter(ピーター)さんとJürgen(ユルゲン)さんが案内してくれました。



Auroomはエストニア最大規模のサウナ製造に特化した会社です。この翌日に訪問した木材製造会社の「Thermory(サーモリー)」の子会社でもあります。スタッフの数はおよそ70名。サウナ一本でこれだけ多くの人が生活しているということに驚きです。



サウナ製造会社のなかには、家具をつくるようにひとりの職人が製材から組み立てまでを行うところもありますが、Auroomは70人という規模を生かして役割分担し、徹底的に効率化をはかっています。電動ノコギリで製材する人、木材に断熱材を入れる人、木材に保護塗料を塗る人、サウナパーツを組んでいく人など。てきぱき、黙々と作業する姿からは、それぞれが年月をかけて仕事の質を上げてきたことが感じられます。







施工担当の長谷川さんは「意外と手作業が多い」と驚きます。タブレットで図面を見て作業したり、3DCNルーターを使って製材したりと、デジタル化で効率的に作業をしていますが「大事なところでは必ず人の目が入っている」とPeeterさんも言います。

また建築士の北村さんは「このくらい大きな規模の会社であればすべて機械化されていてもおかしくないですが、適度に分担して人の目を入れてひとつの製品をつくっているように見えます。だからこそ、色んなサイズや種類のサウナを、クオリティを保ったままつくることができるんですね」と納得の様子。Auroomでは14種類以上のサウナのラインナップがある上に、そこからさらにサイズやデザインが異なるものがどんどん派生していくので、最終的なサウナの種類は数え切れないほどです。

 

17分で新しい設計図面が到着

工場見学のあとは、サウナの組み立てワークショップ。totonoüの定番モデルになった「Cala Grass」をAuroomのサウナビルダーと一緒に組み立てていきます。「これまで手順書から読み取っていた作業工程を実際に見たことで、より自信をもって施工できるようになりました」と施工担当の中山さんは言います。



組み立てた後は、建築士の北村さんが中心となってサウナの中をチェック。実はAuroomのサウナをtotonoüがそのまま日本に輸入しているという訳ではなく、椅子の高さを少し低くする、日本の住宅に合わせて排気と吸気の位置を調整する、ストーブの置く場所を変えるなど、日本人に合うように調整しているのです。

さて、実際に組み立てるなかで、日本仕様のサウナはガラス扉の開閉が標準とは逆の方がいいということが分かってきました。また排気と吸気の位置の微調整も必要に。「次回以降のサウナから改善できるといいですね……」と話し合っていたところ、なんと20分も経たないうちに設計チームのリーダー・Heiko(ヘイコ)さんが新しい設計図を持ってきてくれました。



Auroomにはモジュールハウスの住宅設計など、建築設計の経験をもつメンバー5、6人から成る設計チームがあり、この特殊部隊が早々に対応してくれたとのこと。このチームが顧客のニーズに合わせて臨機応変に新製品を開発しています。設計も製造も組み立ても自社でできるからこそ、バリエーション豊富なサウナを作り出すことができるんですね。



実はtotonoüのラインナップでも人気の一人用サウナ「Cala mini」は、totonoüとAuroomが共同で新しく開発した日本独自の製品です。「totonoüと出会うまでは日本人がサウナを好きだなんて知らなかった」と話すPeeterさんは、当初日本で小さなサウナの需要が本当にあるのか懐疑的でした。ですが、日本の住宅事情を加味した新製品の売上は上々。



上/日本にこれから出荷される「Cala mini」が組み立てられていました。下/パネルキットはこんなにコンパクトに。

「去年の5月にtotonoüメンバーが訪問したときに小さな室内サウナのアイディアをtotonoüから提案され、すぐに設計士がスケッチを描きました。私たちは、シンプルにレゴのようにサウナを組み立てて新しい製品を生み出すのが得意なんです」とPeeterさん。その1ヶ月後に試作品が組み立てられ、9月には正式に販売開始。たった4か月で製品化を実現しました。

 

賃貸住宅にもサウナが置ける秘訣

今回、施工チームは組み立て以外にも木材加工の工程も把握することができました。サウナの木材はどのように加工されているのでしょう

まずは、サウナの壁面に使う断熱材入りの木材をチェック。木材と木材の間にぎっしりと断熱材が詰まった木材キットは、ひとつひとつ職人さんが手作りしています。このパネルキットのおかげで、しっかりと保温されてサウナの熱を逃すことがなく、サウナを置いている部屋が暑くなったりしないのです。また、サウナを設置する場所に特別な工事なども特に必要ありません。部屋には釘一つ打つ必要がなく、現状復帰が可能なので、賃貸住宅でもサウナを手軽に導入することができます。



今年の7月に東京で賃貸住宅フェアに参加する予定するtotonoü。住宅フェアにサウナ会社が出展したのは異例のことだそうです。最近は不動産管理会社やオーナー、ディベロッパーなどから賃貸住宅へサウナを導入する依頼が増えています。サウナを導入することで、不動産の付加価値が向上し、空室率を下げることができるそうです。

また、木材はサーモウッドという特別な加工を施した保温性の高いものを使用しています。(*詳細は3日目)さらに、一本一本の木材には丁寧に保護塗料が塗られていました。これは急激な温度変化に木材が耐えられるようにするもので、木材の寿命も長くします。totonoüが輸出するサウナは110度まで調節可能です。また、素材のクオリティの高さがお手入れのしやすさにつながっています。

 

同じビジョンを共有する、良好なパートナーシップ

今回の訪問では、Auroomがtotonoüチームを歓迎してくれている様子がひしひしと伝わってきました。Peeterさんは「Alexとは仕事でも個人的にも、とてもいい友人関係にあります。ほぼ毎日連絡を取り合って、意見を交換しています」と言います。また、totonoüと同じビジョンを共有しているので、物事を早く、正しく、よりよくしていくために常に改善することができると教えてくれました。



左はtotonoü創業者のAlexさん。右はAuroom海外事業担当のPeeterさん。

Auroomは日本以外にも、ドイツ、フランス、スイス、イタリアなどに輸出していますが、わざわざ工場見学や組み立てワークショップに来たのはtotonoüが初めてとのこと。またAlexさんはエストニア在住のため3ヶ月に一度はAuroomを訪れており、その気遣いもPeeterさんは嬉しいのだとか。

「Auroomという世界トップクラスのサウナ企業と仕事ができて、しかもパートナー企業として大切にしてもらえているというのは本当にうれしいことです。Auroomと組みたい会社は、世界でも多いんですよ」とAlexさん。

工場見学・組み立てワークショップ、打ち合わせが終わったあとは、タルトゥでもっとも若者が賑わう複合施設Aparaaditehas(アパラーディテハス)に移動して、totonoüチームとAuroomチームでディナーを食べました。途中から社長のMarten(マルテン)さんも合流。



最後に、一日案内をしてくれたJürgenさんにサプライズでtotonoüオリジナルのパーカーをプレゼント。早速、その場で着てくれました。

  

エストニアサウナ出張記Vol.3 に続く

 

文:橋本安奈

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